グランプリ

こんな日々が3〜4か月続いたろうか。

はじめて二人で出かけてからは半年以上経っていた。

 

大手デザイン会社が募集したイラストコンクールに応募したと幾子から聞かされていた。

そろそろ結果が出る頃だねと話していたのだが。

 

なんと初の応募で、グランプリを獲得してしまった。

副賞は、けっこうビックリするくらいの現金、それに好みの画材一式、それとデッサンツアーをかねた2泊3日の旅行。

 

佳作入選が目標だったので、応募した幾子本人がいちばん驚いていた。

デザイン会社からは、今後は定期的にイラストを描いてもらいたいというオファーと、大手デザイン会社に、イラストレーターとして所属しないかという打診まで受けていた。

 

一夜にして環境が変化してしまうというできごとを目の当たりにして、オレも半ば放心状態になってしまった。

 

授賞式の打ち合わせにデザイン会社を訪問してきた帰り、とにかくお祝いをしようと、ハンバーグ専門店でディナーをふるまった。

フレンチやイタリアンや、お寿司うなぎなどではなくて、ハンバーグというのが微笑ましいというかなんというか・・・。

 

食事を終えて幾子を家まで送る途中、急に幾子がとても遠いところへ行ってしまうような寂しさと、悲しい気持ちに襲われた。

もうオレなんかの手の届かない存在になってしまうんだ・・・。